#4 RSウイルスとシナジス注射について
RSウイルスって、何?
今回取り上げるのは『RSウイルス』です。
インフルエンザやコロナに比べて聞き慣れない名前かもしれませんが、赤ちゃんのおられる方やもうすぐ赤ちゃんが生まれる方には是非知っておいていただきたいウイルスです。
RSウイルス(Respiratory syncytial virus)はいわゆる “かぜ” を引き起こす代表的なウイルスの一つで、例年秋~冬にかけて流行するとされてきましたが、近年それが早まり7~8月に流行のピークを迎えるようになっています。
コロナ禍の2021年夏に大流行して当時話題になりましたが、2023年春も2年前と同じような流行の立ち上がりとなっており、注意が必要です。
かぜの原因ウイルスなので、当然大人もこどももかかる可能性があります。
一般的には4~6日程度の潜伏期間の後に、発熱・鼻水・咳・のどの痛みなどの “かぜ症状” がみられます。
大人や年長児であれば軽い鼻かぜ程度で気づかないうちに治ることが多いですが、一方で赤ちゃんがこのウイルスにかかると細気管支炎や肺炎を起こし、呼吸状態が悪くなって入院が必要になることもあります。
生後6か月未満の赤ちゃんは重症化しやすく、特に注意が必要です。
このウイルスは私たちの大変身近にいて、「ほとんどのこどもが2歳までに一度は感染する」といわれています。
また免疫ができにくいのも特徴で、一生のうちに何回でもかかります。
それにもかかわらず、今のところRSウイルスに対する特効薬やワクチンはありません(妊娠中のお母さんが接種するRSウイルスワクチンを現在開発中です)。
そのため、RSウイルスから赤ちゃんを守るためには予防が大変重要になります。
このウイルスの感染経路は主に接触感染と飛沫感染なので、①かぜをひいている人との接触を避ける、②流行期には人ごみに連れて行かない、③周囲の人はこまめに手洗いや消毒を行う、などに気を付けてください。
もし赤ちゃんがかぜをひいてしまった場合、①高熱が続く、②呼吸が早く苦しそう/哺乳がしにくい、③ゼーゼー・ヒューヒューといった音がする、などの場合は、なるべく早めに小児科を受診するようにしましょう。
シナジス注射について
先に書きました通り、大人では大したことがなくても、赤ちゃんがかかるとひどくなりやすいのがRSウイルスです。
中でも次に挙げる赤ちゃんは重症化リスクが高いため、RSウイルス感染重症化予防の注射(商品名 シナジス)の保険適応があります。
● 予定日よりも早く生まれた赤ちゃん(在胎期間が35週以下の早産児)
● 生まれつき呼吸器や心臓に大きな病気を持っている赤ちゃん
● 免疫不全を伴う赤ちゃん
● ダウン症候群の赤ちゃん
シナジスはRSウイルスに対する抗体を注射製剤にしたもので、流行期に月1回筋肉内注射を受けることで、RSウイルスにかかった時の重症化を防ぐことができます。
ちなみにこの薬は非常に高額なため誰でも受けられるわけではなく、保険適応外の方が希望して接種することはできません。
当院ではRSウイルス流行期にシナジス接種を行っています。
接種希望の方は、基礎疾患を診てもらっている医療機関からの紹介状を御用意の上、電話(075-575-0808)で予約をお取りください。