#17 1997年4月2日~2008年4月1日生まれの女性の方へ
HPV(ヒトパピローマウイルス)って何?
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、主に性交渉によって感染し、子宮頸がん(子宮の入り口部分のがん)、肛門がん、膣がん、咽頭がんなどのがんや尖圭コンジローマ(性器周辺にできるカリフラワー状の良性のいぼ)の原因となります。
性交渉の経験がある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するといわれており、決して珍しいウイルスではありません。
HPVに感染してもほとんどは自然に治りますが、一部は長期間感染が続き、がんを生じることがあります。
我が国では毎年1万人以上の女性が新たに子宮頸がんにかかり、毎年約2,900人がこの病気で亡くなっています。
他のがんと比べて20~30歳代の若い年齢層で発症する割合が高く、子宮頸がんが「マザーキラー」とも呼ばれる理由です。
子宮頸がんはワクチンでの予防が大事
子宮頸がん対策は、HPVワクチン接種による感染予防と、定期的ながん検診による早期発見が両輪です。
現在主に使用されている9価ワクチン(シルガード®9)は、子宮頸がんの原因の80~90%を防ぐとされています。
一生涯で2人に1人はがんと診断される現代において、子宮頸がんはワクチンで予防可能な数少ないがんの一つです。
ただし、このワクチンは接種時にすでに感染しているHPVを排除することはできず、またがんの進行を抑える効果はありません。
そのため、初めての性交渉までにワクチン接種することが予防効果を高める上で重要であり、定期接種対象年齢の方は遅くとも15歳になる前に初回接種を受けましょう。
予防する病気(9価ワクチンの場合)
子宮頸がん
尖圭コンジローマ
定期接種対象者
小学校6年生~高校1年生相当の女子。
(標準的には中学校1年生)
※高校2年生以降は自費での接種になります。
接種スケジュール(9価ワクチンの場合)
初回接種が14歳以下
①②を6か月あけて、合計2回。
(3回接種も可)
初回接種が15歳以上
①②を2か月、②③を4か月あけて、合計3回。
接種方法
筋肉注射
主な副反応(9価ワクチンの場合)
注射部位の痛み・腫れ・発赤・かゆみなどの局所反応
頭痛
浮動性(ふわふわ)めまい
口やのどの痛み
悪心、下痢
発熱
疲労
など。
HPVワクチンキャッチアップ接種(無料)が2025年3月末で終了します
HPVワクチンは2013年4月から定期接種化されましたが、このワクチン接種後に痛みや運動障害など多様な症状が報告され、同年6月に積極的勧奨(接種を個別に勧める取り組み)が差し控えられました。
これにより、HPVワクチンの接種機会を逃した方が多数おられます。
HPVワクチン(3回目)実施率
2013年度 15.2%
2014年度 1.1%
2015年度 0.5%
2016年度 0.3%
2017年度 0.3%
2018年度 0.8%
2019年度 1.9%
2020年度 7.1%
2021年度 26.2%
2022年度 30.2%
その後の調査により、HPVワクチン接種と多様な症状には因果関係がなかったことがわかり、2022年4月から接種勧奨が再開となっています。
現在HPVワクチン定期接種を逃した方に対して、 “キャッチアップ接種” として公費でワクチン接種できる機会が提供されていますが、2025年3月が期限とされています。
言い換えると、2025年4月以降に接種する場合は自費での接種となり、接種する医療機関によりますが、9価ワクチンであれば3回接種で約8~10万円必要になる上に、万が一健康被害が起こった際の救済措置が手薄になります。
合計3回の接種を完了するまでには約6か月間かかるため、希望される方はなるべく早く接種しましょう。
キャッチアップ接種対象者
平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性。
かつ
過去にHPVワクチン(サーバリックス®、ガーダシル®、シルガード®9)を合計3回接種していない方。
(性交渉の経験がある方、出産を経験された方もご希望があれば接種可能です。)
通常の接種スケジュール(9価ワクチンの場合)
①②を2か月、②③を4か月あけて、合計3回。
(過去にHPVワクチンの接種歴がある場合は、不足分を接種します。)
HPVは男子には関係ないの?
HPVは主に性的接触によって広まるので、女性だけでなく当然男性にも感染し、肛門がん、陰茎がん、咽頭がんなどのがんや尖圭コンジローマの原因となります。
海外ではHPVワクチンを男性に対しても定期接種している国もありますが、我が国では9歳以上の男性に対し4価ワクチン(ガーダシル®)を任意で接種することが可能です。
ご希望の方は御相談ください。