#23 どうなの?今年のインフルエンザ 2024/25
明けましておめでとうございます。
2025年もよろしくお願いいたします。
今回は、今まさに猛威を振るっている、インフルエンザについてのお話です。
(当院ホームページ『ブログ』「#10 どうなの?今年のインフルエンザ」の改訂版です。)
どうなの? 今年のインフルエンザ
2024/25シーズンのインフルエンザは、全国的には第44週(10/28~)に、京都府では第46週(11/11~)に流行入りしました。
※1週間の1定点医療機関当たり患者報告数が、
■ 流行の目安;1を超えたとき
■ 注意報の基準;10を超えたとき
■ 警報の基準;30を超えたとき
2023/24シーズンが京都府では第36週(9/4~)だったため随分遅いと思うかもしれませんが、昨シーズンが特別早かっただけで、今シーズンは例年に比べて1~2週間ほど早い流行入りでした。
その後、全国・京都府とも第50週(12/9~)に注意報レベル、第51週(12/16)に警報レベルに到達。
流行入りからわずか1か月余りで警報レベルに達し、近年例をみない急拡大となっています。
学校・園の冬休みで感染拡大が一息つくことに加えて、医療機関の休診で報告数自体が少なくなるため、年始は一旦みかけ上の患者数が減ることが多いです。
インフルエンザ流行のピークは例年1月後半~2月のため、今後の流行状況により一層の注意が必要です。
インフルエンザにかかってしまったら
まずは安静にしてしっかり休みましょう。
そして何でも構わないので、水分を十分に補給しましょう。
一般に、インフルエンザの感染期間(周囲に感染させる可能性がある期間)は発熱1日前~発症後7日目頃までとされています。
そのため罹患後の登校・登園再開の目安は、
①「発症後5日を経過」
(発熱が始まった日は0日目と数える)
②「解熱後2日(乳幼児の場合は3日)を経過するまで」
(解熱した日は0日目と数える)
上記①②の条件を両方とも満たす必要があります。
お子さんがインフルエンザにかかった場合、特に注意していただきたいのは “異常行動を起こす可能性がある” という点です。
急に走り出す、部屋から飛び出そうとするなど突飛な行動をとることがあるため、インフルエンザ治療薬使用の有無・種類にかかわらず、少なくとも発症後2日間はお子さんの言動に気を付けてください。
万が一の事故を防ぐための対策例
- 玄関やすべての部屋の窓の鍵を確実にかける。
- ベランダに面していない部屋で寝かせる。
- 格子付き窓のある部屋があれば、その部屋で寝かせる。
- 一戸建てに住んでいる場合は、できる限り1階で寝かせる。
インフルエンザ治療薬について
インフルエンザの多くは自然軽快する病気であり、特別な治療薬を使用しないと治らないというわけではありません。
ただ発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬の使用を開始すると、発熱期間を1~2日間程度短縮し、ウイルス排出量を減少させる効果があるとされます。
日本小児科学会では、
● 幼児
● 基礎疾患があり、インフルエンザの重症化リスクが高い患者さん
● 呼吸器症状が強い患者さん
に対して、抗インフルエンザ薬の投与を推奨しています。
現在外来で処方する抗インフルエンザ薬としては、主に次のものがあります。
オセルタミビル(タミフル®)
剤型;
内服薬(ドライシロップ、カプセル)
飲ませ方は、当院ホームページ『ブログ』「#22 こどもへの薬の与え方~内服編③~」参照。
用法;
1日2回×5日間を飲み切り
販売開始;
2001年2月
副作用;
下痢、嘔吐、発疹、低体温など
特徴;
最も使用実績がある薬剤。
生後2週以降の新生児から成人まで幅広く利用可能。
より安価なジェネリック医薬品も販売されている。
インフルエンザ罹患後の異常行動は本剤使用者に限った現象ではないとの判断の下、2020/21 シーズンから10代の副作用の記載は削除された。
ザナミビル(リレンザ®)
剤型;
吸入薬
用法;
1日2回×5日間を吸い切り
販売開始;
2000年12月
副作用;
発疹、下痢、嘔気・嘔吐、気管支けいれんなど
特徴;
我が国で最も早く発売されたインフルエンザ治療薬。
気管支喘息や乳製品にアレルギーがある場合は推奨されない。
ラニナミビル(イナビル®)
剤型;
吸入薬
用法;
1回吸入で完了
販売開始;
2010年10月
副作用;
下痢、嘔気、蕁麻疹、めまい、気管支けいれんなど
特徴;
気管支喘息や乳製品にアレルギーがある場合は推奨されない。
1回の吸入で治療が終了するため、確実な吸入が求められる。
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)
剤型;
内服薬(錠剤)
用法;
1回内服で完了
販売開始;
2018年3月
副作用;
下痢、嘔気、変異ウイルスの発生など
特徴;
12 歳以上に対しては、他の治療薬と同等の推奨度。
特にB型インフルエンザに対しては効果が高い。
低年齢児では本剤での治療中に変異ウイルスが出現するリスクが高く、2024年12月時点で日本小児科学会は5歳以下の小児への積極的使用を推奨していない。
治療薬比較① 使用回数
—1日2回×5日間 vs. 1回だけで終了—
内服薬のオセルタミビル(タミフル®)と吸入薬のザナミビル(リレンザ®)は、1日2回を5日間、最後まで使用し続ける薬剤です。
一方、吸入薬のラニナミビル(イナビル®)と内服薬のバロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)は、1回使用するのみで効果が得られるとされる薬剤です。
病気のお子さんに薬を飲ませたり吸入させるのは御家族にとっても大きな負担です。
そのため1回で完了する治療薬は大変魅力的✨に映りますよね。
しかし “薬剤使用のチャンスが1回しかない” ともいえるので、上手に薬を使用できなかったり症状がなかなか良くならない場合でも追加投与ができない、という側面もあります。
治療薬比較② 使用方法
—内服薬 vs. 吸入薬—
内服薬のオセルタミビル(タミフル®)はドライシロップとカプセルが販売されており、新生児から成人まで幅広く利用できます。
※ドライシロップ;粉薬の一種で、水に溶かして飲むタイプの顆粒状の薬。
内服薬のバロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®)は2024年12月現在錠剤のみの販売であり、錠剤の服薬が困難と考えられる5歳未満での使用は現実的ではありません。
ザナミビル(リレンザ®)とラニナミビル(イナビル®)はともに吸入薬なので、特に5歳以下の乳幼児には使用が難しいことが多いです。
この二剤はいずれも粉末の薬剤を吸入するタイプなので咳込みを誘発する可能性があり、呼吸器症状が強い場合や気管支喘息などの呼吸器疾患がある場合には注意が必要です。
また、ザナミビル(リレンザ®)とラニナミビル(イナビル®)は乳蛋白を含む薬剤であるため、乳製品にアレルギーがある場合にはお勧めできません。