#25 たった10個が1,000,000,000,000個に⁉
ロタウイルス胃腸炎ってどんな病気?
ロタウイルスは、流行性嘔吐下痢症の原因となる代表的なウイルスです。
その大きさは直径約100nm(1万分の1mm)。
電子顕微鏡でみるとウイルス粒子が車輪のような形をしていることから、ラテン語で車輪を意味する “ロタ” の名前が付けられています。
多くの型が存在し、生後6か月~2歳をピークに、「5歳までに少なくとも1回は感染する」といわれています。
何回も繰り返しかかりますが、特に初めて感染したときに症状が強く表れ重症化しやすいです。
感染経路は経口感染、接触感染、飛沫感染で、冬~春(2~5月頃)にかけて流行します。
潜伏期間は1~2日で、感染力が非常に強く、しばしば保育園などであっという間に広がります。
主な症状は嘔吐、下痢、発熱で、米のとぎ汁のような白っぽい下痢便をすることもあります。
このウイルスに特効薬はないので症状に応じた治療を行いますが、下痢や嘔吐を繰り返すと脱水症を引き起こし、状態によっては入院して点滴で水分を補う必要があります。
まれですが、けいれんを繰り返したり、脳炎・脳症を合併して後遺症を残すこともあります。
ロタウイルス胃腸炎の予防法は?
ロタウイルスは、10~100個くらいのウイルス粒子が体内に入ることで感染が成立します。
多くの場合はウイルスが付着した飲食物や手などを介して感染するので、流水下で石鹸を使ってしっかり手を洗いましょう。
※アルコール消毒はあまり有効ではありません。
感染者の下痢便1g中には1,000億~1兆個😲のロタウイルスが含まれるとされており、感染者と接触した場合やおむつ交換時は特に注意が必要です。
嘔吐物や下痢便で汚れた衣類などは、捨てるか、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)で消毒後に他の衣類と分けて洗濯してください。
ロタウイルスにはワクチンがあります!
「たかが胃腸炎」と軽く考えていると危険です。
ロタウイルスワクチン導入前の我が国では毎年約80万人の患者さんがいて、そのうち2~8万人(多くは2歳以下)が入院し、10人前後の方が亡くなっていました。
このワクチンはロタウイルス胃腸炎の重症化を約90%防ぐことができ、WHO(世界保健機関)は「こどもが接種する最重要ワクチンのひとつ」と位置付けています。
我が国では2011年に経口弱毒生ワクチンが任意接種として開始、2020年には定期接種化され、発症が減っています。
予防する病気
ロタウイルス感染症
胃腸炎と脳炎・脳症などの重い合併症
※ノロウイルスなど、ロタ以外のウイルス性胃腸炎は予防できません。
定期接種対象者・接種スケジュール
ワクチンは2種類あり、予防効果や副反応はほぼ同等です。
同じワクチンを決められた回数接種します。
1価ワクチン(ロタリックス®)
生後6週0日(通常2か月)
~24週0日(5か月半)の期間内に、
4週以上の間隔をおいて2回接種。
5価ワクチン(ロタテック®)
生後6週0日(通常2か月)
~32週0日(7か月半)の期間内に、
4週以上の間隔をおいて3回接種。
※いずれのワクチンも、生後14週6日(3か月半)までに初回接種を受けましょう。
接種可能な期間が短いワクチンなので、忘れず早めに接種を!
接種方法
経口
医療機関で口から飲ませる
接種後の吐き戻しを避けるため、少なくとも接種する30分前から授乳を控えてください。
主な副反応
下痢
嘔吐
発熱
易刺激性
咳嗽/鼻漏
食欲低下
など
※ワクチン接種後1週間程度はウイルスが便中に排泄されるため注意!
ロタワクチンと腸重積
腸重積とは、 “腸管の一部が隣接する腸管の中に折り重なるように入り込み、腸閉塞を起こす病気” です。
症状としては腹痛→嘔吐→血便の順に出現するとの報告が多いですが、赤ちゃんであれば不機嫌で5~10分おきに激しく泣くことで気づかれる例もあります。
血便は粘液と血液が混じった粘血便で、いちごゼリーやいちごジャムのような見た目です。
腸重積の治療は、通常肛門から液体や空気を入れることにより、入り込んだ腸管を元の状態に戻します。
ただし発症からの時間が長いほど、閉塞部の腸管が壊死して開腹手術を要する可能性が高まるため、速やかな治療が必要です。
なお日本小児科学会はロタウイルスワクチンについて、「生後15週以降は、初回接種後7日以内の腸重積症の発症リスクが増大するので、原則として初回接種を推奨しない。」としています。
ワクチンを接種したかったのに、初回接種が遅くタイミングを逃してしまうことがないように、生後2か月になったら早めに予防接種を開始しましょう。