#28 解熱剤の使い方
2歳になりました
おかげさまで、2025年5月18日かとうベビー&キッズクリニックは開院から丸2年を迎えました。
日頃からお世話になっている方々には、この場をお借りして深く感謝申し上げます。
これからも日々の診療を通して、少しでも子育ての負担を減らし楽しくする、そのお手伝いをしたいと思っています。
こどもを育てる御家族に、「手はかかるしいろいろ大変だけど、かわいいし楽しいからもう一人欲しいな」と思ってもらうことで、微力ながらこの少子化に抗えたらと考えています。
解熱剤、使うべき? 使わざるべき?
さて、今回は解熱剤(げねつざい)の使い方について、です。
(当院ホームページ『ブログ』「#24 坐薬の使い方」「#26 こどもが発熱! どうしよう…①」「#27 こどもが発熱! どうしよう…②」のページもご覧ください。)
以前ブログで記したように、こどもの発熱の大半は感染症によるものです。
我々の体は、体温を上げることにより病気のもと(ウイルスや細菌などの病原体)に対する抵抗力を高めます。
そうすることで、病気のもとを抑え込むことにつながります。
つまり発熱とは、大事な防御反応の一つなのです。
そのため、「熱が出たから」といって安易に解熱剤を使用することはお勧めできません。
実際、解熱剤を使用した事例ではウイルスを体外に排出する期間が延長した、との報告もあります。
機嫌良く遊んだり、飲食がまずまずできていれば、たとえ高熱であっても慌てて熱を下げる必要はありません。
反対に、「ぐったりして水分が摂れない」「しんどくて眠れない」という場合には、解熱剤を使って積極的に熱を下げてください。
解熱剤を使ったからといって、早く病気が治るわけではありません。
「使用することにより発熱の苦痛を和らげる」という目的を理解してください。
※生後3か月未満の赤ちゃんには、基本的に解熱剤を使用しないでください。
重症な感染症の可能性があるため、急いで小児科を受診しましょう。
こどもの解熱剤
解熱剤使用の目安としては、「体温が38.5℃以上」とされることが多いです。
しかしお子さんが辛そうであれば、38℃台前半で解熱剤を使っても構いません。
一方で先に述べたように、機嫌良く遊ぶ元気があるのなら、39~40℃の高熱でも解熱剤は不要です。
また、スヤスヤ眠っているところを起こして解熱剤を使用するのは控えてください。
小児科で処方される解熱剤
① アセトアミノフェン
飲み薬;カロナール® など
細粒はわずかにオレンジ🍊のような匂い
味は甘く、後に苦い🤮
坐薬;アルピニー®、アンヒバ® など
② イブプロフェン
飲み薬;ブルフェン® など
いずれも再使用は6時間以上あけてください。
飲み薬と坐薬の同時使用はやめてください。
必要時のみ使用し、1日3回など定期的に使わないでください。
お子さんに大人用の解熱剤を絶対に使わないでください!
💣小児で避けるべき解熱剤
アスピリン
インドメタシン
インダシン® など
ジクロフェナクナトリウム
ボルタレン® など
メフェナム酸
ポンタール® など
これらの薬は、
インフルエンザや水痘(みずぼうそう)の感染時に急性脳症の発症リスクを高める、
体温を過度に下げる、
血圧低下を引き起こす
などの恐れがあるため、使用しないでください。
解熱剤Q&A
① 飲み薬よりも坐薬の方が効くの?
坐薬と飲み薬の効果はほぼ同じとされることが多いです。
一方で下記の説明のように、アセトアミノフェンでは飲み薬の方が早くよく効く、との考え方もあります。
② どのくらいで効果が出るの?
薬剤添付文書によると、健康成人男性にアセトアミノフェン 400mgを投与した比較試験では下記の表のような違いがあります。
飲み薬は投与後15~30分で血中濃度がピークに達し、坐薬と比べて最高血中濃度も高いです。
それに対して、坐薬は血中濃度の上がり方が緩やかで、体内に長くとどまります。
※これはアセトアミノフェンの坐薬が油脂性の基材(坐薬のベースとなる材料)で作られていて、体内で溶けるまでに時間がかかることが一因です。
要約すると、アセトアミノフェンに関しては「飲み薬は早くよく効く、坐薬はゆっくり長く効く」といえます。
また、アセトアミノフェンの効果は4~5時間持続しますが、解熱効果が最大になるのは投与から約3時間後、投与から5時間後くらいから元の体温に戻ってくる、という報告もあります。
③ 解熱剤を使っても熱がちょっとしか下がらないんだけど…
高熱時には解熱剤を使用しても期待したほど体温は下がりません。
39℃以上の小児にアセトアミノフェン投与後の体温変化をみた研究では、
投与後1時間で1.0℃程度
投与後3時間で1.7℃程度
の解熱効果が確認された、としています。
熱が高いときの解熱剤の効果はこの程度です。
しかしちょっとでも熱が下がると少し楽になるので、その間に水分や食事を与えるようにしてください。
④ 市販の解熱剤は医療機関で処方されるものと一緒なの?
処方箋がなくてもドラッグストアなどで購入可能な医薬品を「OTC医薬品」といいます。
OTC医薬品にも小児用アセトアミノフェン製剤があります。
小児用バファリンCII®、
小児用バファリンチュアブル®、
こどもパブロン坐薬®
など。
ただし、これらは用量が少なめに記載されているため、解熱効果を感じにくいかもしれません。