#29 痛くないインフルワクチン「フルミスト®」について|かとうベビー&キッズクリニック|醍醐駅すぐ京都市伏見区の小児科

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#29 痛くないインフルワクチン「フルミスト®」について|かとうベビー&キッズクリニック|醍醐駅すぐ京都市伏見区の小児科

#29 痛くないインフルワクチン「フルミスト®」について

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今回は季節を先取りして、新しいタイプのインフルエンザワクチンについてのお話です。

 

 

フルミスト®ってどうなの?

2024年10月、経鼻弱毒生インフルエンザワクチンである「フルミスト®点鼻液」が我が国でも販売開始になりました。

フルミスト®とは、日本で初めての鼻に噴霧(スプレー)するタイプのインフルエンザワクチンです。

従来のように針を刺す必要がないため、「痛くないインフルエンザワクチン」とも呼ばれます。

日本での歴史はまだ浅いですが、欧米では20年以上前から使用されてきました。

このワクチンは、年齢に関係なく、左右それぞれの鼻の穴に1回ずつ噴霧することで接種が完了します。

2~18歳の方が対象で、任意接種だからといって誰でも接種できるわけではありません。

噴霧されたワクチン中の弱毒生インフルエンザウイルスは、接種を受けた人の鼻やのどで増殖します。

それにより、自然にインフルエンザに感染したときと同じような形での免疫の誘導が期待できます。

 

 

予防する病気

インフルエンザA型およびB型

A型2種類(H1N1H3N2)、B型1種類をカバーした3価ワクチンです。

 

接種対象者

2~18歳

海外での試験で、2歳未満では接種後に入院や喘鳴(呼吸困難)のリスクが増大したとの報告があります。

よって、現時点では2歳未満の小児に接種適応はありません。

 

接種回数

各シーズン1回のみ

 

接種方法

左右の鼻腔内に0.1mlを1回ずつ噴霧

このとき、ワクチンを積極的に吸い込む(鼻をすする)必要はありません。

 

他のワクチンとの接種間隔

前後の接種間隔に規定はありません。

 

主な副反応

鼻水・鼻づまり(約6割)

(3割弱)

のどの痛み(2割弱)

頭痛(1割強)

発熱(10%未満)

など

接種後⼀定期間は、ワクチンウイルスがインフルエンザの迅速検査で陽性を⽰す可能性がある、とされています。

 

 

フルミスト®の注意点

水平伝播(すいへいでんぱ)の可能性

フルミスト®は、弱毒化されてはいますが、生ワクチンです。

そのため飛沫や接触により、接種を受けた人から受けていない人にワクチンウイルスが拡がる可能性があります。

接種後3~4週間はワクチンウイルスが残存している可能性があるとされています。

従って、接種後1~2週間は重度の免疫不全者や乳児との接触は避けてください。

 

抗インフルエンザウイルス剤使用について

フルミスト®と抗インフルエンザウイルス薬を併用した場合、ワクチンウイルスの増殖が抑制されることで、フルミスト®の効果が減弱してしまう可能性があります。

米国や欧州の添付文書では、ワクチン接種後2週間以内に抗ウイルス薬が投与された場合、ワクチンの効果を低下させる可能性がある、との記載があります。

ワクチンの恩恵を十分受けるためには、インフルエンザが流行する前に余裕をもって接種するようにしましょう。

 

川崎病後などでアスピリン内服中の場合

インフルエンザとアスピリンなどのサリチル酸系医薬品、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸といった薬剤は、ライ症候群(急性脳症の一つ)やインフルエンザ脳炎・脳症の重症化との関連が示唆されています。

それゆえにフルミスト®と上記薬剤は併用注意となっています。

川崎病後などでアスピリンを定期内服中の場合は、フルミスト®接種可能か主治医に確認してください。

 

妊娠出産年齢の女性の方へ

生ワクチンのため、接種前約1か月間および接種後約2か月間は避妊する必要があります。

 

 

フルミスト®お勧めする人&しない人

従来の不活化ワクチンと経鼻弱毒生ワクチン(フルミスト®)の間に、はっきりとした予防効果の差はありません。

そのため日本小児科学会は、2~18歳のインフルエンザ予防において、不活化ワクチンと経鼻弱毒生ワクチンを同等に推奨しています。

ただしフルミスト®の特性により、不活化ワクチンの方が推奨される場合もあります。

 

👃 フルミスト®を勧める人 👃

とにかく注射が嫌で嫌で仕方がない人

〇 不活化ワクチン接種後に注射部位の腫れが強くなりやすい人

 

💉 不活化ワクチンを勧める人 💉

喘息がある人

米国では、

▼ 喘息または喘鳴の既往歴のある2~4歳児

▼ 過去1年以内に喘息発作があった人

への接種を推奨していません。

● 授乳中の人

● 周囲に免疫不全患者がいる人

● 生後6か月~1歳

● 19歳以上

● 免疫不全の人

● 無脾症の人

● 妊婦

● ミトコンドリア脳筋症の人

● ゼラチンアレルギーのある人

● 中枢神経系の解剖学的バリアー破綻がある人

人工内耳埋め込み術後

内耳の先天性形成不全

持続的な脳脊髄液交通

など

 

 注意 

♦ 経鼻ワクチンのため、大量の鼻水や強い鼻詰まりがある場合は、接種できない可能性があります。

♦ フルミスト®接種時に嫌がって暴れてしまうお子さんには、不活化ワクチンを勧めることがあります。

 

 

フルミスト®Q&A

① 接種後どのくらいから効果が出るの?

このワクチンは、接種後2週間程度経過してから効果を示すとされています。

インフルエンザが流行する前に余裕をもって接種するようにしましょう。

 

② ワクチンの効果はいつまであるの?

1回の接種で約1年効果が持続するとされています。

 

③ 接種後鼻をかんだり、くしゃみしたり、飲み込んでも大丈夫?

接種後に鼻をかんだり、くしゃみをしても問題ありません。

鼻やのどに垂れる感じがして、それを飲み込んでも大丈夫です。

上記の場合でも、インフルエンザ予防に十分な量を接種しているので、再接種は要りません。

飲み込んでしまっても、胃酸によりワクチンウイルスは失活しますので安心してください。

 

④ 卵アレルギーがあっても接種できるの?

添付文書では、「鶏卵、鶏肉、その他鶏由来のものに対してアレルギーを呈するおそれのある者」を接種要注意者 (接種の判断を行うに際し、注意を要する者) に分類しています。

同様の記載は不活化ワクチンの添付文書にもあり、卵アレルギーがあってもほとんどの方は接種可能です。

 

⑤ 大人は接種できないの?

現時点での国内における接種適応年齢の上限は19 歳未満です。

海外では50歳未満を対象に使える国もあるため、今後適応が拡大する可能性もあります。

 

⑥ 処方してもらって自宅で接種できる?

このワクチンは院外処方できません。

従って患者さんが医療機関以外で接種(投与)することはできません。