#9 インフルエンザはインフルエンサー⁇
今回の話題はインフルエンザについて、です。
ここ数年は新型コロナウイルスの陰に隠れていましたが、皆さんご存知の代表的な冬のウイルス感染症です。
2023年は例年に比べて早くから流行がみられ、新型コロナウイルス感染症第9波との同時流行となっているため、特に注意が必要です(当院ホームページ『ブログ』「#7 2023年度インフルエンザワクチン接種について」のページもご覧ください)。
ちなみに “インフルエンザ” の語源は、16-17世紀にイタリアの占星術師たちが流行性感冒を「冬の冷たい寒気や星の動きの影響(=influenzaインフルエンツァ)により発生している」と考えたことに由来する、とされています。
一方、インターネットやSNSを通じて発信した情報が世の中に大きな影響を与える人物の総称である “インフルエンサー(influencer)” も英語で「影響者」を意味する言葉であり、インフルエンザと語源は同じです。
インフルエンザもインフルエンサーも、世界中に素早く広がって大きな影響を及ぼすという点では一緒ですね。
インフルエンザとかぜの違いは?
我が国での季節性インフルエンザは例年12月~3月にかけて流行し、1~2月にピークを迎えます。
いわゆる “かぜ” は様々なウイルスによって起こりますが、インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染することによって引き起こされる病気です。
主な感染経路は飛沫感染や接触感染で、インフルエンザウイルスは大きく分けてA、B、Cの3つの型がありますが、流行を起こして問題となるのはA型(H1N1、H3N2)とB型です。
私たちがかぜをひくと発熱、咳、鼻水などの症状がみられますが、インフルエンザの場合は2日前後の潜伏期間をおいて高熱が出ることに加え、頭痛、関節痛、筋肉痛、倦怠感(だるさ)などの全身症状が強く表れやすいのが特徴です。
他にものどの痛み、鼻水、咳などの呼吸器症状や、嘔吐、下痢、腹痛などの消化器症状がみられることもあります。
また合併症としては、脳炎・脳症、肺炎、喉頭炎(クループ)、熱性けいれん、中耳炎、心筋炎などがあり、乳幼児や高齢者を中心に重症化しやすい点も重要です。
診断は鼻咽頭ぬぐい液を用いた迅速抗原診断キットで行われるのが一般的で、発症翌日が最も検出率が高く、発症から半日以内は偽陰性(本当はインフルエンザにかかっているのに検査結果が陰性と出てしまうこと)となる可能性があります。
インフルエンザ脳症ってどんな病気?
体内に侵入してきたインフルエンザウイルスに対し、免疫反応が過剰に働くことによって脳に激しい炎症が起こり、脳浮腫(脳の腫れ)が生じる病気です。
多くは5歳以下の乳幼児で、インフルエンザ発症後2日以内にみられやすく、けいれん、意識障害、異常言動・行動などが起こります。
※異常言動・行動の例
(「小さないのち」アンケート調査より)
- 両親がわからない。いない人がいるという。
- 自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない。
- アニメのキャラクター・象・ライオンなどがみえる、など幻視・幻覚的訴えをする。
- 意味不明な言葉を発する。ろれつが回らない。
- おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情。
- 急に怒り出す、泣き出す、大声で歌いだす。
短い期間で脳の腫れが進行し、濃厚な治療を行っても亡くなったり(約8~9%)、後遺症として脳障害を残す(約25%)こともあります。
アスピリン(商品名バファリンなど)、ジクロフェナクナトリウム(商品名ボルタレン)、メフェナム酸(商品名ポンタールなど)といった解熱剤と脳症との関連が明らかになっているので、インフルエンザにかかったときはこれらの薬剤ではなく、アセトアミノフェン(商品名カロナール、アルピニー坐剤、アンヒバ坐剤など)を使用するようにしてください。
インフルエンザにかからないために
最も有効な対策はインフルエンザワクチンです。
このワクチンはインフルエンザウイルスの感染を完全に防ぐためのものではありませんが、発病する可能性を減らす効果や、かかったときの重症化や合併症の発生を予防する効果があります。
流行するウイルスの型は毎年変わるので、ワクチンも毎年接種することが望ましいです。
特に気管支喘息や熱性けいれんなどの持病がある方、幼稚園・保育園に通っている乳幼児、赤ちゃんや妊婦さんのいる御家族は、積極的にワクチンを受けましょう。
ワクチン以外の対策としては、手洗い・手指消毒、うがい、十分な休息と栄養、こまめな換気、適切な湿度保持などが大切です。
十分な感染対策をして、インフルエンザから大事な人を守りましょうね。